プレスリリース

報道関係者各位
2024年10月29日
株式会社 社会情報サービス

医療の「デジタル改革」の今と将来
~第1回:デジタル医療の総論と現状~

日本政府が2030年頃までに実現を目指す都市開発プロジェクトの一環である「スーパーシティ構想」では、都市のマネジメントを高度化し、医療を含む多様な課題解決や新たな価値創出を目指すことを目的とし、各地方自治体では改革実現に向け様々な取り組みを実施している。

株式会社社会情報サービス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:牧田孝)は、医療領域において自治体でのデジタル改革への取り組みの現状と課題の把握、デジタル化推進に求められる要点や将来の医療のデジタル化について、デスクリサーチに加え、先駆的にデジタル化に関するプロジェクトを進めている自治体の関係者に対してインタビューを行い、その方向性を探った。

このシリーズでは、
第一回:デジタル医療の総論と現状
第二回:自治体向けインタビューの詳細
を掲載する予定となっている。

*第一回のサマリー*
  • 医療に限らず、自治体におけるデジタル化は、その自治体が置かれた状況によって目的が異なる。
  • デジタル化を進めるためには、関係各所とのコミュニケーションが重要となる。
  • 自治体がデジタル化推進の為に手を組む企業は、その規模によって特徴が異なる。

自治体における医療に関する「デジタル化」推進の目的とドライバーとバリア、プロジェクト推進に向けた企業との関わりについて整理したい。

【デジタル化推進の目的】
デジタル化推進の目的については、今回のインタビューを通じて、各自治体の環境によって異なる傾向が見られた。

<都市型>
平野部に見られる、いわゆる都市型地域では「都市としての価値の増大」「今後全国的に起こりうる課題へのモデル事業・先例の提供」を目的とする傾向がある。
<山間地・農村型>
一方で、多くが郊外に所在する山間地・農村型の地域では「生活資源へのアクセスの悪さ、暮らしにくさの解消」「産業・経済の再生・活性化」から「人口減少の抑制」、最終的には「市町村機能の存続・維持」につなげることが挙げられる。
【医療のデジタル化推進へのドライバー・バリア】
“医療領域”でのデジタル化推進への喫緊性が高く、住民からの要望がより強いのは、山間地・農村型の地域であり、現在の医療サービスへのアクセスの困難さが、将来の医療への不安を抱かせている。
このような地域では遠隔診療事業などの新たな技術を用いたもので現況に即した解決策が切に求められるが、実現には医療従事者の関与や医師会との志向/利害の一致、良好な関係性などが必要とされる。
一方で、都市型地域では現状で必要な医療機能が保たれているため、“現在の医療”におけるデジタル化に対するモチベーションは相対的に低いものであったが、行政としては、将来的には医療・健康データ利活用として、PHR(Personal Health Record)サービスや電子カルテシステムとの連携による個人の健康管理につなげていきたいというビジョンを有しているケースも見られる。
都市型地域においても、山間地・農村型地域と同様に、関係各所との関係性は重要な点であり、コミュニケーションが重要な点として挙げられる。
また、いずれの地域においても”医療のデジタル化”を進めるためには、患者も含めて相応の「デジタルリテラシー」が必要と思われ、この点を強化するための活動は別途必要なものと考えられている。
【プロジェクト推進に関わる協力企業:大手、地元企業それぞれのメリット・デメリット】
実際のプロジェクト推進には多くの協力企業や組織との連携が必要とされ、自治体は大手・地元企業双方に参画を提案し、プロジェクト実現を目指していくが、大手・地元企業の協力にはそれぞれメリット・デメリットが存在することがわかる。大手企業は全国規模の技術力・資本力を持ち、全国規模でのPR活動などが可能な為、市町村への注目を集めることができるといったメリットはあるが、大手企業自体が市町村民に馴染みが薄いため、親しみにくく、また、利潤が必ずしもその市町村のみに還元されるわけではない、といったデメリットも挙げられる。
一方で地元企業においては地元との結びつきも強く、利潤は市町村に還元されるが、大手企業のような資本力やPR力といった点に関して弱いというデメリットがある。
<協力企業として大手企業・地元企業を選択する際の相対的なメリットとデメリット>
メリットデメリット
大手企業高い技術力や資本の提供を受けることができる
全国規模での知名度や注目を得られる
住民にとって親しみにくく、「自分事」として捉えにくい
地元企業地元との結びつきが強いため、利益調整がしやすい高い技術力や資金、注目を得ることが難しい

今回当社で取りまとめたデスクリサーチと自治体へのインタビューにおいて、地域形態によって自治体・住民からのデジタル医療に対するニーズが異なることが確認された。
山間地・農村型の地域では医師リソースを筆頭に医療資源が限られるため、医療サービスへのアクセスのしにくさが大きな課題であり、またその切迫性は高い。加えて年々過疎化も進み住民数の減少傾向から生じる地域存続の危機といった視点からも、デジタル医療による遠隔診療や検査検体・医療物資の運搬やインフラ整備などには大きなニーズかある。
一方で都市型の地域では医療資源やサービスは潤沢に提供されているが、例えば独居老人のフレイル検知のようなサービスを行うことを想定しても、ビッグデータ等を活用した「先を見越した」デジタル医療のニーズは高まるであろう。そのために、行政から住民へのデジタルサービスの説明を通し、サービス導入への理解を促す活動を継続的に行い、住民とデジタル医療の間に隔てる「壁」ができないよう、また、解消できるような方法も構築していく必要がある。

また、山間地・農村型、都市型と環境の違いに関わらずデジタル医療を推進するためには様々なステークホルダーの関与が求められる。自治体は医師会などの医療領域ステークホルダーとのコネクションを確立しておく必要があり、プロジェクトをマネジメントする企業や必要技術を提供する企業とは長期にわたるプロジェクト運営のために密な連携を取る必要もある。なによりも、自治体自身が改革へ向かうための「熱量」を維持していくという心づもりが重要である。

高齢化、過疎化が進む日本社会においてデジタル医療が寄与する範囲は今後も広がっていくものと思われる。
デジタル医療によって必要な治療やサービスを迅速に受けられることで、患者だけでなくその周りの家族や介護にかかわる人々へのQoL向上にもつながる可能性がある。
必要な医療を必要な人へ届けるためにヘルスケア業界は今後も医療領域におけるデジタル改革に向け様々な業種との連携を視野に入れていくべきと考えられる。

後日配信予定の第2稿では実際のインタビューの内容を記載予定。
岡山県吉備中央町の企画課の承諾の元、先駆的な自治体における実際の動きや、将来に向けた構想などのインタビューの内容の掲載を予定している。岡山県吉備中央町は「デジタル田園健康特区」に指定をされており、デジタル社会の先導役として位置づけられている。
※デジタル田園健康特区とは;
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf

■本件お問い合わせ先

株式会社社会情報サービス 担当:高辻
e-mailytakatsu@ssri.com
■株式会社社会情報サービス
設立 1982年4月
資本金 2,700万円
代表者 代表取締役 牧田 孝
従業員数 137名
所在地 本社
〒162-0067
東京都新宿区富久町10-5 NMF新宿EASTビル 2F、3F
大阪支社
〒541-0046
大阪府大阪市中央区平野町4-6-3 大明ビル4F
関連会社 PDリサーチ株式会社
MDB株式会社
SSRI China Co., Ltd.(海外子会社)
SSRI Asia Pacific Co., Ltd.(海外子会社)
HIMA Research(海外関連会社)
URL https://www.ssri.com/
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