「対面回帰」は本当か?
~ "市場の盲点"と次世代のチャネル戦略 ~

目次
はじめに
新型コロナウイルスによるパンデミックを経て、社会活動が正常化する中、医療現場における情報の「流れ」は再び大きな転換点を迎えています。一時期の急速なデジタルシフトから、揺り戻しとも言える対面機会の復活。
DXの定着とリアルの再評価が交錯する今、多くの製薬企業が直面しているのは「限られたリソースを、結局どのチャネルへ投下すべきか」という経営課題ではないでしょうか?
本分析では、2万人以上の医師が回答した「PatientsMap」の直近3年間のデータを分析し、「医師が重視する情報入手経路」の変化を可視化。データに基づき、今後の製薬マーケティングにおける効果的なチャネル戦略のヒントを探ります。
分析の概要
- 分析の目的:
- 医師が「重視する情報入手経路」の直近3年間の変化を捉え、次世代のチャネル戦略のヒントを得る。
- 分析データ:
- 医師アンケート調査データベース「PatientsMap」(2023年~2025年)
- 分析の手法:
- 医師が「重視している情報の入手経路(最大3つ回答)」の経年推移を分析
分析結果1:全体傾向
復権する「リアル」とインフラ化する「デジタルコンテンツ」
はじめに、医師全体における情報入手経路重視度の推移を確認します。
【考察】
データから読み取れるのは、医師による明確な「チャネルの選別」です。パンデミック期に急速に普及した「MRリモート面談」が減少に転じる一方、従来型の「MRの直接訪問」は増加傾向にあり、対面コミュニケーションの価値が再評価されています。
一方で注目すべきは「講演会」の動向です。「MRの直接訪問」が回復しているにもかかわらず、「リアル講演会」への回帰は見られず、「WEB講演会」が高水準を維持しています。これには、以下の3つの背景が推測されます。
情報の同質化
学術情報の取得において、リアルとWEBに大きな差異がないと判断されている。
コミュニケーションの変化
かつてリアル講演会の付加価値であった「医師同士の対面交流」の優先度が下がっている。
タイムパフォーマンスの追求
移動や拘束時間を避け、効率を重視する働き方の定着。
これらのことから、医師は単に「昔に戻った」のではなく、「知識吸収はデジタル、信頼構築はリアル」というハイブリッド・モデルの最適解に到達しつつあると言えます。
分析結果2:施設規模別
HPとGPで加速するニーズの「二極化」
次に、施設規模別(HP:20床以上、GP:20床未満)での推移を確認します。
【考察】
「MRの直接訪問」に対する重視度は、HPとGP医師で対照的な動きを示しており、チャネル戦略を明確に分離する必要性が示唆されます。
HP医師(対面回帰)
「MRの直接訪問」の重視度が増加傾向にあり、明確な「対面回帰」が見て取れます。複雑な院内組織での合意形成や高度な専門薬の処方において、リモートでは代替できない「対話の質」や「きめ細やかなサポート」が求められていると考えられます。
GP医師(効率化志向)
「MRの直接訪問」の重視度は依然として高水準にあるものの、年々低下傾向がみられます。これは「MR離れ」というよりも、「診療の合間を縫って情報を得たい」という効率化が求められた結果と考えられます。GP医師においては、人的リソースを最適化しつつ、デジタルによるカバー率を高める戦略こそが、中長期的な勝機につながると考えられます。
なお、「MRリモート面談」については、施設規模に関わらず減少傾向にあり、主要な情報源としての地位を失いつつあることが確認できます。
分析結果3:医師経験年数別
若手医師こそが求める「対面の価値」
最後に、医師としての経験年数別(若手:10年未満、ベテラン:25年以上)での推移を確認します。
【考察】
「MRの直接訪問」に対する重視度は、ベテラン医師が高止まりしているのに対し、若手医師では明確な増加傾向を示しています。
WEBで基礎情報は完結する世代だからこそ、臨床現場での個別の疑問や、WEBでは得られない「暗黙知」を提供してくれるMRの価値を再評価し始めていると示唆されます。若手医師へのアプローチでは、デジタル一辺倒になるのではなく、質の高いMRによる「個別解の提示」こそが、強力な差別化要因になる兆しがあります。
まとめ
本分析では、2万人以上の医師が回答した「PatientsMap」の時系列データを基に、リアルとデジタルが共存するハイブリッド環境下におけるチャネル戦略の要諦を紐解きました。データが浮き彫りにしたのは、医師の情報収集行動は「一律の対面回帰」ではなく、属性による構造的な変化を含んでいるという点です。- 全体としては、「知識はデジタル、信頼はリアル」のハイブリッド化が進む。
- 施設規模では、「HPの対面回帰」と「GPの効率化(デジタルシフト)」に二極化。
- 世代別では、若手医師ほど「対面の付加価値」を求め始めている。
これらは、画一的な戦略では捉えきれない「市場の盲点」です。「全医師一律のDX」や「一律の訪問強化」ではなく、ターゲット医師の属性に合わせてリアルとデジタルの配分を緻密に最適化することが、投資対効果を最大化する鍵となります。
PatientsMapのデータをさらに深掘りすることで、以下のような詳細な分析も可能です。
- 「MR離れ」が進むGP医師が、代わりに重視し始めた情報源は何か?
- 若手とベテランで、MR以外のデジタルチャネル活用にどのような違いがあるか?
- 「リアル選好派」と「デジタル選好派」の医師プロファイルの違いは?
貴社の領域、ターゲット医師は今、何を求めているのか。
「肌感覚」と「データ」のズレを修正し、根拠ある戦略を描くために、ぜひ「PatientsMap」をご活用ください。貴社の課題に合わせた、より詳細な分析やご提案も可能です。