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なぜ中国市場は読みにくいのか?
巨大市場が並ぶ中国
~ 市場構造の前提を読み解く ~

最終更新日:2026/03/06

はじめに

中国の医薬品市場は、いまやグローバル戦略において欠かせない存在となりつつあります。
膨大な人口規模、加速する医療制度改革、そして急速なイノベーションの進展。これら魅力的なマクロ指標は、多くの企業の期待を裏付け続けています。
しかし、そのポテンシャルの影で、中国市場特有の「構造の見えにくさ」と、それを読み解くための「客観的情報の欠如」が課題となるケースが少なくありません。
  • 「信頼できる客観的なデータが乏しく、市場の正体が掴めない」
  • 「ターゲットが分散しており、限られた情報では戦略を絞りきれない」
  • 「日本での成功モデルを適用しようにも、比較可能な指標が見当たらない」
こうした情報の不透明さは、市場構造の複雑さと相まって、戦略の解像度を著しく低下させます。

本シリーズでは、大規模医師調査データから中国市場の実像を読み解きます。
第1回は、市場の前提となる市場規模に着目します。

分析の概要

本分析では、中国・日本・米国の医師を対象に同一の調査設計で実施された大規模データベース『PatientsMap』を活用。共通の指標で3か国を対比させることで、中国市場のスケール感を客観的に可視化しました。

分析データ:
医師アンケート調査データベース「PatientsMap」
中国(2022年:約1万人)
日本(2025年:約2万人)
米国(2024年:約6千人)

分析の手法:
希少疾患を含む15領域を対象に、疾患ごとの患者数推計値を比較

分析1:市場の「選択単位」を変える、圧倒的スケール

日米中3か国の患者数上位疾患を比較すると、中国市場の特異性が明確に現れます。
以下は、各国の患者数推計値の上位10疾患を比較した結果です。
患者数推計ランキング 上位10疾患

【考察】
患者数推計値ランキングを比較した際、最も明確に表れる違いは市場規模の「基準値」そのものです。
中国では主要疾患の患者数が日米より一段大きな水準で分布しており、その差はランキング下位にまで及びます。象徴的なのは、中国の第10位の疾患規模が、日本最大の市場(第1位)とほぼ同等である点です。

つまり、膨大な人口規模を背景に、中国ではトップ10に入る各疾患がそれぞれ単独で主要市場として成立する規模を持っています。3か国比較の視点で見ると、中国市場は単一領域の選択に留まることなく、複数の疾患が同時に主戦場となり得る市場構造です。

さらに、がんや脳梗塞といった重症疾患も例外ではなく巨大市場の一角を占めています。中国では重症領域も戦略的に検討すべき主要市場として位置づけられる可能性を示唆しています。

分析2:がん領域に見る巨大市場の内部構造

市場規模の違いは、疾患領域の内部にも及びます。
ここでは例として、がん領域における患者数推計値の上位5疾患を比較しました。
がん領域 患者数推計値ランキング 上位5疾患

【考察】
がん領域においても、主要ながん種の多くが日米より一段大きい水準で分布していることが確認されました。先ほどと同様に、中国では複数のがん種がそれぞれ主要市場として成立する規模を持っています。

これは、中国市場の特徴が領域間の広がりだけでなく、領域内部にも及んでいることを示しています。複数のがん種が同時に戦略対象となり得る構造は、中国市場が単一の主戦場ではなく、複数の主力級ターゲットが並走する市場であることを意味します。

その結果、優先順位は単純な患者数ランキングだけでは決まりません。診療科構造、治療選択肢、需要の集中度などを踏まえたポートフォリオ視点での検討が前提となります。

まとめ

本稿では、3か国比較を通じて中国市場の疾患規模を整理しました。
そこで明らかになったのは、中国では単一領域が突出するのではなく、複数の巨大市場が並行して成立しているという構造です。市場の違いは規模の大小ではなく、「選択単位」そのものに及んでいます。

このような市場では、個別領域の知見や単純なランキングだけで戦略を描くことは困難です。重要なのは、需要がどこにどのように分布しているのかを横断的に把握し、優先順位の根拠を構造として捉えることにあります。

その基盤となるのが、国・疾患・医師を横断して市場を読み解く「データの横串」です。この視点を持つことで、不透明に見える巨大市場においても、意思決定の解像度を高めることが可能になります。

グローバル戦略をそのまま持ち込めない理由とは?

同じ疾患でも、国によって診療科の関与割合は大きく異なります。
乳がん・肺がんを事例に、日米中の診療科分布の違いをまとめた資料を公開中です。

次号予告

第2回 アンメットニーズの可視化
巨大な患者規模の中で、新薬に対するニーズは疾患間でどう違うのか?
「市場の大きさ」を「投資の余地」へと変換する、需要密度の正体に迫ります。

貴社の注力領域において、ターゲット医師は今何を求めているのか?
PatientsMapでは、こうした需要構造を医師単位で把握し、
どの領域・どの医師に需要が集中しているかを具体的に可視化することが可能です。

お問い合わせ先:
株式会社社会情報サービス, PatientsMap
patientsmap@ssri.com

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