PatientsMap

データで読み解く中国市場 #2

どこに投資余地があるのか?
中国の「需要密度」を読み解く

最終更新日:2026/03/10

はじめに

本シリーズ第1回では、日米との比較から中国では単一領域が突出するのではなく、複数の巨大市場が同時に成立する市場であることを紹介しました。しかし、複数の領域が同時に存在する構造は、市場の魅力を高める一方で、参入優先順位の判断を難しくさせます。

新薬開発や市場参入の判断には、少なくとも2つの視点が不可欠です。

  • 患者ボリューム(市場規模):機会の「量(規模)」を示す
  • 新薬要望度(アンメットニーズ):需要の「質(強度)」を示す

規模が大きくてもアンメットニーズが満たされていれば参入余地は乏しく、アンメットニーズが強くても規模が小さければ優先順位は上がりません。

本シリーズ第2回では、市場規模だけでは見えない優先順位を「需要密度(量×質)」という視点から読み解きます。患者ボリュームと医師の新薬要望度を重ね合わせることで、中国市場における投資機会の質と偏在を明らかにします。

分析の概要

本分析では、中国・日本・米国の医師を対象に同一の調査設計で実施された大規模データベース『PatientsMap』を活用。3か国比較を通じ、中国市場におけるアンメットニーズの全体像と偏在を整理します。

分析データ:
医師アンケート調査データベース「PatientsMap」
中国(2022年:約1万人)
日本(2025年:約2万人)
米国(2024年:約6千人)

分析の手法:
アンメットニーズとして各疾患の「新薬要望度(診療医師の中で、その疾患に対して新薬を望む医師の割合)」を算出し、患者規模と統合評価を実施

分析1:3か国比較で見える需要構造

日米中3か国における「新薬に対する要望度」を比較します。
以下は、各国の新薬要望医師割合を比較した結果です。左図は全疾患の平均で、右図は疾患領域別の平均を示しています。

3か国比較 新薬要望度

【考察】
全体平均を見ると、中国の新薬要望度は日米と比較して約1.6倍高く、市場全体で新薬への期待が極めて強いことが分かります。

領域別に比較しても、がん領域をはじめとする複数領域で同様の傾向が確認されました。これは、第1回で述べた「複数の巨大市場が並走している」という状況において、そのいずれの領域でも新薬への強い渇望感――つまり未解決の需要(アンメットニーズ)が市場横断的に存在していることを示しています。

この結果は、中国が単に「患者数の多い市場」であるだけでなく、「未解決需要が構造的に存在する市場」であることを示しています。

分析2:需要密度による投資余地の可視化

では、その需要はどこに集中しているのでしょうか。
中国の主要疾患について、患者規模と新薬要望度を統合して整理すると、需要構造の違いが明確に現れます。
以下は中国において、患者数推計値(X軸:対数表示)と新薬要望度(Y軸)をプロットした結果です。

患者ボリュームと新薬要望度

【考察】
患者ボリュームと新薬要望度を組み合わせることで、中国市場では大きく3つのパターンが確認されます。

成熟型市場(生活習慣病領域)
大規模だが需要は中程度。既存の治療選択肢が一定数存在するため、競争は差別化中心。
高密度需要領域(血液がん等)
規模は中小でも需要が集中。高い投資対効果が期待でき、優先度が上がり得る。
未解決の大市場(主要がん領域)
規模と需要が同時に成立。戦略上の中核となる領域。

このように中国市場における投資機会は、市場規模の大小ではなく需要密度の分布として現れます。どの疾患で需要が集中しているかを把握することで、参入優先度は戦略的に並び替えられます。

まとめ

本稿では、中国市場における医師の新薬要望度を、患者ボリュームと統合して整理しました。
そこで明らかになったのは、中国では新薬要望度が日米と比較して高い水準にあり、その需要は疾患ごとに偏在しているということです。市場機会は単なる規模ではなく、需要の強さと分布によって形成されていると言えます。

第1回で示した「患者ボリューム(量)」に、本稿で示した「アンメットニーズ(質)」を重ねることで、参入優先度は「どの市場が大きいか」から「どこに需要が集中しているか」という視点へと変わります。需要密度という評価軸は、市場機会の質を見極めるための実務的な指標となります。

もちろん、実際の開発投資や参入判断においては、これらの患者ボリュームとアンメットニーズという2つの重要な要素に加えて「マーケットアクセス」の問題がクリアできるかも併せて必要になります。しかし、この2つの要素は、まず最初に地図を広げ、行く先の方向を探るような視点として捉えておくべきでしょう。

PatientsMapでは、患者規模とアンメットニーズを医師単位で統合し、需要が集中する領域とターゲット像を具体的に可視化できます。
どの疾患で、どの診療科の医師が、どの程度新薬を求めているのかを把握することで、参入優先度の設計はより具体化します。市場規模だけでは見えない投資余地の把握が、グローバル戦略の精度を高めます。

自社疾患での需要密度を確認しませんか?

指定いただいた対象疾患・診療科について、
患者規模とUMNを掛け合わせた可視化イメージをご提示します。
まずは情報収集としてお気軽にご相談ください。

お問い合わせ先:
株式会社社会情報サービス, PatientsMap
patientsmap@ssri.com

<< データで読み解く中国市場 #1
製品ページに戻る>>
scroll top