株式会社 社会情報サービス
プレスリリース
株式会社 社会情報サービス
医療の「デジタル改革」の今と将来
~第2回:自治体インタビュー~
日本政府が2030年頃までに実現を目指す都市開発プロジェクトの一環である「スーパーシティ構想」では、都市のマネジメントを高度化し、医療を含む多様な課題解決や新たな価値創出を目指すことを目的とし、各地方自治体では改革実現に向け様々な取り組みを実施している。
株式会社社会情報サービス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:牧田孝)は、上記のうち医療領域における改革に主眼を置き、自治体でのデジタル改革への取り組みの現状と課題の把握、デジタル化推進に求められる要点や将来の医療のデジタル化について、デスクリサーチに加え、先駆的にデジタル化に関するプロジェクトを進めている自治体の関係者に対してインタビューを行い、その方向性を探った。
本稿では10月29日に配信した「医療のデジタル改革の今と将来」の第二回目として、岡山県吉備中央町のへのインタビュー内容の要約と弊社独自の考察を掲載する。(第1回目記事はこちらhttps://www.ssri.com/press_release/2024/10/29/20241029/)
岡山県吉備中央町は国家戦略特別区域の特徴の一つである、新しい技術やサービスを実験的に導入することが可能な「デジタル田園健康特区」に指定されており、未来社会の先導役として位置づけられている。
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf
- 医療デジタル化を進めるためには、住民の意向や、ステークホルダーとの関係性、行政の志向などが特に重要となる。
- 先ずは「段階的に」できると思われることから進めていくことが望ましい。
【岡山県吉備中央町のデジタル医療推進の成功例】
今回インタビューに協力いただいた「岡山県吉備中央町」は標高200~500mに位置する中山間地域で、2023年現在の人口は約1万407人。1990年代半ばから人口減少が続いている。
現在の町長は同町においてかつて掲げられた”テクノポリス構想”に携わっていたこともあり、デジタルによる地域改革に非常に前向きである。
行政が前向きな背景もあり、吉備中央町はスーパーシティ構想に提案・再提案を行い、健康分野の取り組みが評価されることで、2022年4月よりデジタル田園健康特区に指定された。
そしてこのスーパーシティ構想への参画をきっかけに近隣の国立大学の学長(医学部教授)や協力企業などステークホルダーとの関係構築をしていき、協力体制の基盤を整えていくことに成功している。
一方で、上記のように吉備中央町は住民の医療へのアクセスや人口減少という課題に直面している。具体的には、町内に二次救急の医療施設がないため、救急搬送は町外の病院まで約1時間を要してしまう。その間に様態が急変して、更に転移搬送が発生してしまうというようなケースも見られることや、住民の高齢化によって、人口減少が続いている。
そのような状況において、自治体が実施した住民アンケートでも「医療への不安、不満」がトップに上がり、このような住民意識も自治体として医療へのプライオリティが高まるきっかけとなった。
- 住民の医療に対する不安・不満
- 医療領域のステークホルダーとの関係基盤
- 首長の強い志向
吉備中央町では、1.住民の“医療”に対する不安・不満があったことに加え、2.医療領域ステークホルダーとの関係基盤を構築することができたため、医療課題への協力を得られやすい環境があったことも挙げられる。デジタル化においては3.現町長が非常に前向きであるということで、医療デジタル化のハード面の整備がスムーズに進行したと考えられる。
医療デジタル化を推し進める吉備中央町の例からは、これらの複合的な要因・要素が医療におけるデジタル化を円滑に進める強い後押しとなっていることがわかる。
【岡山県吉備中央町のデジタル医療推進への具体的な取り組み】
吉備中央町の医療デジタル化の具体的な取り組みのひとつに「遠隔採血」(※関係団体と調整中)がある。
吉備中央町が「遠隔採血」に取り組もうと考えた背景には、先にも挙げられた通り、住民の通院の負担という課題があり、高度・専門的な医療を要する患者については1時間かけて岡山市内に通院しており、同町で行われたアンケートでも「通院」への不満が特に多く見られることにある。
同町では、必ずしも「遠隔採血が最も大きな医療的な問題点であったかはわからない」と理解しつつも、まずは段階的に進められるところから、という意味で「遠隔採血」を取り組みとして進めるに至った。
医師側からも「仮に遠隔”診療”を整備したとしても、結局は採血のための通院を避けられないので、通院負担という根本的な問題に対する解決に至っていない」という問題提起が挙げられており、どこかのタイミングで「遠隔採血」は問題点として挙げられるものであるという点がその後押しにもなっている。
上記の通り、本来の意味での”遠隔診療”を行った場合であっても、こういった採血や検査が遠隔でできないようでは、根本的な解決にはならないので、先ずは可能なところから、医療サイドの了解が取れるところから、一歩ずつ事業を進めていくことは重要であるように思える。
一方で吉備中央町の遠隔採血のプロジェクトに関しては現在、規制改革に向けて関係団体と調整中ではあるが、先端を行く町であるがゆえに手探りの状態で、例えば輸送のコストやルートなどのような物理的な部分も未知であることが多く、実証すべき点が多く、今後も課題が多く存在するものとみられる。
とは言え、吉備中央町は、行政、医療、企業という関係ステークホルダー間の協力体制が大きなアドバンテージとなっており、この新規プロジェクトを最終的には解決していくこととなると考える。
自治体が医療デジタル化を進めるにあたって、様々な背景やボトルネックがあることは明らかであるが、各々の市町村がそれぞれの課題に対して解決方法を模索している。
先駆的と考えられる吉備中央町であっても、やはり多くの課題があり、いかにして解決をしていこうかと工夫をこらしている。
市町村によって目標が異なる医療の「デジタル改革」というテーマは、一緒くたにした結論が出せない難しいものであるが、社会情報サービスはどのように関わっていくことができるのかを今後様々な視点から注意深く考察していくことが重要である。
株式会社社会情報サービスは、医療デジタル化を推進するさまざまなステークホルダーとの対話を促進し、より良い医療環境の実現に貢献していきたい。
■本件お問い合わせ先
株式会社社会情報サービス 担当:高辻 | |
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ytakatsu@ssri.com |
■株式会社社会情報サービス | |
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設立 | 1982年4月 |
資本金 | 2,700万円 |
代表者 | 代表取締役 牧田 孝 |
従業員数 | 137名 |
所在地 | 本社 〒162-0067 東京都新宿区富久町10-5 NMF新宿EASTビル 2F、3F |
大阪支社 〒541-0046 大阪府大阪市中央区平野町4-6-3 大明ビル4F | |
関連会社 | PDリサーチ株式会社 MDB株式会社 SSRI China Co., Ltd.(海外子会社) SSRI Asia Pacific Co., Ltd.(海外子会社) HIMA Research(海外関連会社) |
URL | https://www.ssri.com/ |